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IIJと日本通信の業績不振にみるMVNOの未来

      2015/05/26

「過激なMNPキャッシュバックありき」の販売手法や、高止まりを続ける携帯料金に対して、マスコミを中心として大きな批判が高まってから一年が経とうとしています。

携帯キャリア各社は、実質的負担の軽減を標榜した新プランを導入しましたが、一方、新興勢力としてのMVNOが登場し、既存キャリアからの割安感を武器に競争が行われてきました。

さて、その結果はどうなったのでしょうか。今日はそんなお話。

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MVNO事業者の経営不振

 この格安SIMを巡り、先週、気になる異変が起こった。料金競争をリードしてきた業界2位のインターネットイニシアティブ(IIJ)が3月24日、2015年3月期の業績予想を下方修正した。連結営業利益は前の期比11.8%減の50億5000万円になるとした。従来予想は同13.6%増の65億円を見込んでいた。

主な理由はNTTドコモの回線使用料がIIJの想定より上振れしたことにある。

IIJ業績下方修正のワケ MVNOと携帯電話大手の微妙な関係(ITトレンド・日経産業新聞)

快進撃を続けていたかに見えるMVNO事業者ですが、業界2位であるIIJが業績予想の下方修正を行いました。記事によれば、同社が使用しているドコモのネットワーク使用量が予想より高かったことが主因ということです。どういうことでしょうか。

MVNO各社は、自前での通信網を持つ大手キャリア各社からネットワークを借り受けてサービスを提供しています。ある意味、キャリアからいかに安くネットワークを借りられるかに全てがかかっているといっても過言ではありません。

MVNOの日本におけるパイオニアである日本通信では、ドコモへのネットワーク接続料の引き下げを求め、訴訟にまで発展しました。

仮想移動体通信事業者(MVNO)の日本通信は19日、携帯電話回線の卸売料金が不当であるとして、回線を借りているNTTドコモに算定式の見直しや過払い金の返還を求める訴訟を東京地方裁判所に起こした。

「算定式を勝手に変更」、日本通信がドコモを訴えた譲れない事情(日本経済新聞)

その結果かは定かではありませんが、総務省によって「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」が改訂され、MVNO向けのパケット接続料が引き下げられました。

しかし、このガイドラインの策定によって、今回のIIJ社の下方修正が生じることとなりました。

通信設備にかかっているコストを回線のデータ処理能力で割って算定する。NTTドコモの場合、分母に当たる回線処理能力はスマホの急速な普及に対応するため年々拡大しており、分子に当たる設備の効率化も進める。その分、使用料も下がってきた。

しかし、今回はそれが裏目に出た。実際には設備コストや回線処理能力がどう推移するかは1年後にならないと正確には分からない。そこで携帯電話会社が期初に「今年度は最終的にこれくらい下がるだろう」と予測して暫定的な回線使用料を設定する。MVNOは月々この料金を支払い、最終的に回線使用料が決まったら暫定値との差分を精算する。

IIJ業績下方修正のワケ MVNOと携帯電話大手の微妙な関係(ITトレンド・日経産業新聞)

期初にその年度での通信能力の伸びを推定し、それに応じて料金を算定し、期末に実際の処理能力との差額を精算する仕組みのため、想定より処理能力の伸びが少ないと今回のように、差額を精算する必要が出てきます。ガイドライン改定の影響もあり、2013年度は接続料が従来の半額ほどに引き下げられたために、MVNO各社は接続料引き下げを見込んで格安プランを順次投入し、厳しい状態へと向かっていったということのようです。

通信網を保有するキャリアから回線を借り受けて運営するMVNOが宿命的に避けられない問題であり、今後もこういったリスクを背負うことになることは間違いありません。

MVNOの抱える根源的問題

MVNOが抱えるリスクは、接続料問題だけではありません。

業界最大手である日本通信も、業績予想の下方修正を行いました。

同社が関与するVAIO Phoneの発売が遅延したことによる売上高未達が下方修正の主因としていますが、同時にこうも記載しています。

携帯事業者の通信料金が揃って高止まりしている日本の市場においては、MVNO によってもたらされる低価格通信に価値はありますが、一方で、この事業そのものは、中長期的に収益性が高い事業とはなりません。なぜなら、他社との差別化が料金以外には極めて難しいからです。

業績予想の修正に関するお知らせ(日本通信)

MVNO事業は各社が参入し、認知度がかなり向上するなど携帯業界ではホットな存在ではあります。しかし、その実態としては大半の会社がドコモのネットワークを使い、前述の接続料の問題を抱えています。

同一会社のネットワークを使用している以上、通信エリアや品質といった料金以外での競争は事実上不可能です。料金の値下げ競争には自ずと限界があり、日本通信も認めている通り消耗戦となるほかありません。

そこで、同社ではVAIO Phoneを投入し端末販売を行うなど、通信サービスの提供にとどまらないビジネス展開を模索しているようですが、その開発には困難が生じるなど一筋縄ではいかなそうです。

 

一時は株価が倍近くになるなど、かなり期待の集まったMVNOですが、その前途は決してバラ色というわけではなさそうです。

 - MVNO, 日本通信

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